移住しなくても
【移住しなくても】前編:家族のような友人宅で、暮らすように旅するフランス

【移住しなくても】前編:家族のような友人宅で、暮らすように旅するフランス

観光地を巡る旅もいいけれど、生活するように滞在する旅にあこがれがあります。美容師の福場みどり(ふくば・みどり)さんは、そんなバカンスを過ごすひとり。

毎年夏は1か月ほどフランスへ。中断した時期もあったけれど、子育て中に知り合い、家族のようにつながり続けた友人たちを訪ね、のんびりしていると言います。

前編では、フランスでの過ごし方や、そんな旅をするようになった理由などをお聞きしました。

 

まるで里帰り。気持ちのいい関係を保つ気遣い

夏になると、バカンスを過ごすためにフランスへ旅立つ福場さん。旅のおもな目的は、古くからの友人たちに会いに行くことだと言います。

福場さん:
「たまたま家族のように大切な友人たちがフランス人ばかりなんです。移住できたらと考えたこともありますが、家族も仕事もありますから。

せめてまとまった休みをフランスで過ごせたらと、パリ、ブルターニュ、ブルゴーニュなどにある友人宅を訪ねるのが、何年も続いています。

夏に行くのは、みんなも私も海が好きですし、バカンスで友人たちの親戚も集まるから。実家に帰るような感覚なんですよ。

1か所にはだいたい1週間弱くらいの滞在で、たまに美術館に行ったり映画を観たり。ときにはちょっと遠出して蚤の市などに連れて行ってもらうこともありますが、特別なことはあんまりしませんね」

▲フランス・ブルターニュ地方の沖合にある島「ベル・イル・アン・メール(海の上の美しい島の意味)」。福場さん撮影。

福場さん:
「バカンス期間ということもあって、友人や家族で集まり、みんなでおいしいものを長い時間をかけて味わって、おしゃべりして。そういうゆっくり流れる時間に、豊かさを感じます。

フランス人は冷たいイメージがあるかもしれませんが、付き合うと情が深いんですよ。私もおしゃべりですけれど、友人たちは私を上回るおしゃべり。
議論好きで、子どもたちも含め、時事問題や政治の話もよくします。

旅行好きのお客様からは、『毎年同じところに行って、飽きない?』と聞かれるんですけれど、私にとっては、旅というより里帰りみたいな感覚。だから飽きるということはないですね」

宿泊費を払うようなことはないものの、お土産は友人たちに合わせてたっぷり持参するのだとか。

福場さん:
「重いし、何もいらないからね、と言ってくれるけれど、やっぱり喜んでくれるとうれしくて。

子どもにはおもちゃとか、若い子には保湿パックとか。前に持って行って評判が良かったもの、たとえば七味唐辛子、温泉の素みたいな入浴剤、使い捨てカイロなど。本当にひとりずつ考えて、どっさり持っていきます。

お醤油など日本の調味料を持って行って、日本料理を作ることもありますよ。

このあいだはきつねうどんを作りました。前回は親子丼を作りましたし、あとカレーもみんなけっこう好きですね。ルーを使った普通のカレー。お好み焼きとか餃子とか、けっこういろいろ作っています。

こう考えると、本当に旅行というより、里帰りみたいな感じですよね(笑)」

 

パリへの移住を夢見た20代

実は20代の頃に、フランスで暮らしたことがあったそう。

福場さん:
「暮らしていたというか、長いバカンスみたいな感じです。美容師たるものニューヨークかパリかロンドンに行かなくちゃと思い、お金を貯めたんです。

パリに行くことにしたのは、学生時代からフランスの映画をよく観ていたから。ストーリーがきれいに終わらない感じとか、フランス語の響きも好きで。

パンとチーズのおいしさに感激しましたし、美術館に行ったり、散歩をしたりするだけで、すごく楽しかったです」


福場さん:
「最初は知人とルームシェアをしていたんですけれど、知り合いのツテで今の店名の由来にもなっている、ケレー通りというところにあるアパルトマンに住むことができました。

手に職があるから、移住もできるんじゃないかって。当時は現地にいる日本人の髪を切るなどして暮らしを繋いで、なんとかなる気がしていたんですよね。今思うと無謀だったと思います」

日本には帰らないつもりで渡仏した福場さんでしたが、パリで出会った日本人男性との結婚・妊娠を機に、帰国しました。

子どものおかげでつながった、フランスとの縁

帰国後は、息子さんを保育園に預けて東京でプライベートサロンを始めました。現在、フランスで会う友人たちの多くは、このときに日本でできた友だちが多いのだとか。

福場さん:
「一番仲良くしている家族みたいな友だちのマリーは、同じ通りに住んでいて、一番下の子が息子と同じ保育園に通っていたんです。1年も経たずにフランスへ帰国してしまったけれど、すごく仲良くなって。

マリーが通っていた日本語学校つながりでダニエルという友人もできました。

私がフランスにいたことを知っていたママ友の紹介では、イザベルという友人と知り合いました。当時はまだ無謀で、貪欲にフランス人の友だちを増やしたくて。

ママ友から『隣にフランス人が越してきた』と聞いて、『えっ、会いたい! 友だちになりたい!』と言って、会いに行ったんです。

そのときは不在だったんですけれど、『自分はこういう者で、よかったら今度お茶しませんか』と手紙を郵便受けに入れておいたら、連絡をくれました」

▲パリ滞在時に拾った猫のぽっちゃんは、一緒に帰国した。

 東京で子育てをしているときに仲良くなったフランス人たちを訪ねて再び渡仏したのは、息子が3歳半になってからでした。

福場さん:
「おいでよ、とみんなが言ってくれたんです。
少し不安でしたけれど、年少さんともなるとだっこしなくていいし、ごはんもよく食べていたし、ふだんから手がかからない子だったから、大丈夫かな、と。幸い、飛行機でもとてもおとなしくしてくれました。

フランスは子どもにとてもやさしいんですよ。息子はみんなにかわいがってもらって、全然知らないお店に入っても、なんかもらったりしてるんです(笑)。

髪がちょっと長くて、よく女の子と間違われていました」

▲バカンス中はみんなでゆっくりと食事を楽しむ。福場さん撮影。

福場さん:
「家族ぐるみで過ごすので、フランスに息子の幼馴染や兄弟がいるような感じになっていきました。息子は仲良くなった女の子と婚約したり(笑)。親子3人で行くので、宿泊費はかからないと言ってもやっぱりお金はかかります。でも息子に経験してほしい、この景色を共有したい、という気持ちが大きかったです。

保育園や小学校に行き出すと、1か月もべったり一緒に過ごすことなんて、ないじゃないですか。息子もうれしそうだったし、今振り返ると、大切な時間だったなと思います」

子どもと一緒のフランス旅は、小学校6年生の夏休みまで続きました。

福場さん:
「息子は小学校でサッカーを始めたんですね。
夏にフランスへ行ったら練習できないから、秋の公式戦には出られないけど、どうする?と聞いたら、公式戦は出られなくてもいい、と。

その代わり、最後にフランスに行きたい。中学生になったらサッカー優先にする、と本人が決めました」

ずっと続いていたフランス旅は、いったんここで途切れます。続く後編では、ひとりで行くようになったフランスのことや、これからの暮らしについて伺います。

(つづく)


photo:滝沢育絵(3,9枚目以外)



もくじ

福場みどり

愛媛県出身。大手美容室勤務を経て、独立。現在は表参道でプライベートサロン「30,ruekeller」を営む。

Instagram:@m30ruekeller

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