
リップに手帳、お財布、ポーチ。お出かけに欠かせないものとして選び集めてきた「バッグの中身」には、そこかしこにその人らしさが詰まっています。
「あの人のバッグ」は、気になるあの人のバッグやポーチの中身を見せてもらう連載。今回ご登場いただくのは、ブックディレクターの鈴木美波(すずき みなみ)さんです。
渋谷の書店「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」の店長を経て、現在はフリーランスのブックディレクターとして活躍する鈴木さん。今回は番外編で、バッグの中身と合わせて『お出かけのお供におすすめの本』を紹介していただきました。
- バッグとその中身 -
定番で使いやすいデザインに
ひとさじのオリジナルを足して

左上から時計回りに
ito leather studio / 手帳カバー
無印良品 / ノート
DAISO / ミニ手帳
坂本図書 / シャーペンB
ユニボール / シグノ黒0.38
ブランド不明 / ふせん
POTS / マルチクリーム
Peas / 試作品の赤いトート
BEAMS / 帽子
エンダースキーマ / 財布
鈴木さん:
「今年引っ越したのを機に持ち物の断捨離をして、手荷物もコンパクトになりました。
もの選びは、人と被らない個性的なものに惹かれる気持ちと、どこでも買える手軽なものが好きな気持ちのはざまで行ったり来たりしています。
だからこそ定番のアイテムにステッカーを貼ったり、気に入っているDMを挟んだりして自分らしくアレンジしていることに、今回改めて気づきました」

鈴木さん:
「手帳カバーは、イベント出店で隣り合う機会の多い『ito leather studio 』さんにオーダーして作っていただいたもの。鮮やかな色とシンプルなデザインが気に入っています」

鈴木さん:
「バッグはデンマークのスーパー『イヤマ(現在は閉店)』のオリジナルバッグ。使いやすくて重宝しています。
バッグ選びで重視するのは機能性。見た目が気に入っても、使い勝手がよくなければいずれ使わなくなってしまって、結局はシンプルな作りのものに落ち着くことが多いです」
ミステリーから新書まで
おでかけを共にしたい4冊

鈴木さん:
「特に電車の中は大好きな読書の時間。特定のジャンルを選ぶというより、その時々の心境によって持っていく本を変えています。気持ちにゆとりがあるときは、小説や短歌、新書などじっくり読みたいものを。反対に忙しいときは、今までに読んだことのあるなじみの本や、仕事の資料になる本を選ぶことが多いですね」
01:『コリーニ事件』(フェルディナント・フォン・シーラッハ著 / 酒寄進一訳 / 東京創元社)

鈴木さん:
「ドイツの小説家であり弁護士でもある著者による法廷劇。とある殺人事件の犯人に隠された真実が、ラストに思いもよらない角度で迫ってきます。
200ページ程度であっという間に読み切れるので、移動中にもぴったり。ですが、実際の法制度にも影響を与えたというくらいに鋭いところをついた、力のある物語です」
02:『θの散歩』(富田ララフネ著 / 百万年書房)

鈴木さん:
「副題は「本を読むことが子育てに与える影響について」。生まれたばかりの小さな子ども 、θ(シータ)をベビーカーにのせて東京・上野周辺を散歩し続ける日々を綴ったエッセイ。本を読む時間を捻出したい気持ちと、現実の暮らしとのバランスを探る主人公の1年の姿が現在進行形で描かれていて、新鮮な読み心地です。
主人公が本の中でも常に動いているので、こちらも移動しながら読むと面白いのではないかと思いました。日記やエッセイのように気軽につまめながら、骨太な読み応えが残ります」
03:『移動と階級』(伊藤将人著 / 講談社)

鈴木さん:
「最近読んだ新書で面白かった一冊。『行きたい場所に、いつでも行けますか』『自分の移動を決めて、実行できますか』の2つの問いを元に、移動から見えてくる世の中の分断・格差・不平等の原因をあぶり出していきます。
普段読まないジャンルの本を読みたい、けれど難しい本は苦手という方におすすめしたいのが新書。あるテーマの入門書のようなわかりやすい書き口のものが多く、本に入り込む時間が細切れになりやすい通勤時間などにも、ちょっとした学びに触れられるのが良いところです」
04:『ふつうの人が小説家として生活していくには』(津村記久子著 / 夏葉社)

鈴木さん:
「ひとり出版社・夏葉社の島田潤一郎さんが、作家の津村記久子さんの話を4日間じっくり聞いてまとめたインタビュー。特別なことではない、皆に開かれている『書く』という手段を使って、自分を掘り下げていく。その具体的な過程に触れられて、自分でも言葉を書いてみたくなりました。作家志望の方のみならず、好きなことで生きていきたい全ての方におすすめです。
二人の会話がラジオのようにするっと入ってくるので、普段ポッドキャストやラジオを聞いている方が『今日は何か本を読みたいな』と思った時にぴったりではないかと思います」
どんな人のどんな時にも寄り添う、懐の深い本をお供に
▲イベント出店を主に活動する鈴木さんは、今月埼玉県の越生町に実店舗の本屋をオープン予定
鈴木さん:
「私自身が幼少期から本好きだったわけではなく、人に紹介された1冊の本をきっかけに本にのめり込むようになりました。
そんな風にニッチなテーマからベストセラーまで、世界中の本の中には必ず自分に合うものがあって、その受け皿の広さが本の面白さだと思います。
これから開く本屋も、そんな出会いのきっかけになるような存在になれたらいいなと。読書会も定期的に行いながら、お客さんと本を楽しみ合える環境を作っていきたいです」
おでかけのお供に、自分ならどんな「本」を選ぶか。鈴木さんのお話を聞いたら、本に対する視点がまた新たに広がる気がしました。
「あの人のバッグ」、つぎはどんな方が登場するでしょうか。お楽しみに。
【写真】鈴木美波


鈴木美波
書店と編集の総合企業『SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS』に15年勤務の後、2024年に独立。ブックディレクターとして、ある場所の選書やお話会の開催、イベントの出店など、本を通じて人と人を繋げる活動を幅広く企画する。今年6月に埼玉県越生町に本屋を開業予定。